広告への苦情は、2025年度に12,589件とJARO(日本広告審査機構)の設立以来で最多になりました。コロナ下で急増した2020年度を上回った形です。データを読み込むと、嫌われているのは特定の業種そのものではありません。「表現」「手法」「表示」という3つの型です。この記事では公開データを整理し、嫌われる広告の条件と、広告主が今日からできる対策までまとめます。

この記事でわかること

  • 広告への苦情の全体像(過去最多更新・ネットが6割)
  • 苦情が多い業種ランキングと、数字の読み方の注意点
  • データから見える「嫌われる広告」3つの型
  • 自社の広告を苦情リスクから守る実務チェックポイント
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広告への苦情は過去最多を更新(JAROの年次データ)

広告への苦情が過去最多を更新したことを示すコンセプト図

JAROが2026年7月に公表した2025年度の審査状況によると、苦情の受付は12,589件でした。前年度比49%増で、設立以来の最多を更新しています。これまでの最多はコロナ下の2020年度(11,560件)でしたが、それを上回りました。

インターネットが初めて6割を超えた

苦情の6割超をインターネット媒体が占めることを示す図

媒体別ではインターネットが全体の60.9%を占め、初めて6割を超えました。件数は前年度から7割増えています。年代別では30代の申し立てが前年度比213.1%と、若い層の伸びが目立ちます。スマホで広告に触れる時間が長い層が、そのまま苦情の中心になりつつあります。

苦情は「一部のクレーマーの声」ではなく、配信面のユーザー体験の悪化を映す先行指標と読むべき数字です。

「誤認」から「不快」へ、苦情の質が変わった

苦情の中心が誤認から不快へ移ったことを示す移行図

件数だけでなく中身も変わりました。2025年度は広告表現への苦情が前年度の倍近くに増え、全体を押し上げています。JAROはこの変化を、料金や効果の表示(誤認)中心から、表現そのものへの不快感中心へのシフトと分析しました。あわせて、広告ブロッカーの利用増など「広告忌避」の広がりにも懸念を示しています。

苦情が多い業種ランキングと数字の読み方

苦情が多い業種の上位4業種を示すランキング図

ネット広告への苦情を業種別に見ると、上位は次の4業種です。

順位業種ネット媒体の苦情件数
1医薬部外品935件
2電子書籍・ビデオ・音楽配信934件
3オンラインゲーム653件
4医院・病院471件

全媒体の合計では電子書籍・ビデオ・音楽配信が1,171件で最多です。うち909件は性的な表現への苦情でした。マンガアプリや動画配信の広告で、性的・過激な訴求が繰り返し表示されることへの反発が集中しています。

「業種ワースト=業種全体の問題」ではない

業種の苦情が特定の1社に集中する構図を示す図

ランキングを業種の優劣として読むのは早計です。医薬部外品では、整腸・頻尿対策の商品を販売する1事業者だけに737件の苦情が集中しました。臓器のイラストをGIFアニメで繰り返し見せる広告に対して、「表現が汚い」「気持ち悪い」「しつこい」という声が寄せられています。

つまり、少数の広告主の少数のクリエイティブが、業種全体の数字を押し上げる構図があります。自社の業種が上位でなくても油断はできません。逆に、上位業種でも節度ある広告主が大半です。見るべきは業種ではなく、自社の広告が嫌われる広告の3つの型に当てはまっていないかどうかです。

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データで見る「嫌われる広告」3つの型

嫌われる広告の3つの型(表現・手法・表示)を示す分類図

苦情データを対策に落とすには、業種別ではなくタイプ別に見るのが有効です。嫌われる広告は、次の3つの型に整理できます。

型1: 見たくないものを見せる「表現」

不快な広告表現が静かに嫌われる構図を示す図

表現への苦情は6,749件で、前年度比184.1%ともっとも増えた型です。性的な広告への苦情は1,937件あり、うち1,470件は女性からの申し立てでした。性的な表現のほか、グロテスクな描写や恐怖をあおる訴求もここに入ります。

注意したいのは、攻めた表現がクリック率の上では機能して見えることです。しかし苦情として声を上げる人の背後には、黙って離脱する人が桁違いにいます。生成AI画像の違和感が嫌悪につながる構図は、AI広告はなぜ気持ち悪いのかでも詳しく扱っています。

型2: 消させない・誤タップさせる「手法」

偽の閉じるボタンなどダークパターンの手法を示す図

掲載手法への苦情は1,027件と前年度から6割以上増え、ネット媒体に限ると倍増しました。JAROに寄せられた具体例は、閉じるボタンが無い・極端に小さい、偽の閉じるボタンで誤タップさせる、といったものです。画面全体を覆う表示や、スキップできない動画、同じ広告の連続表示も並びます。

いわゆるダークパターンと呼ばれる設計です。クリックは取れても嫌悪も同時に取っており、獲得単価の数字だけを見ているとこの毀損には気づけません。

型3: 誤認させる「表示」

料金や効果を誤認させる表示の構図を示す図

料金や効果の表示への苦情は3,813件です。医療機関の料金・効果の表示や、健康食品の効能をうたう表示が中心でした。医療・美容系は医療広告ガイドラインの規制も厳しく、医療脱毛の広告のNG表現で整理したように、言える言葉のルールが細かく決まっています。

なお、広告であることを隠すステルスマーケティングは、2023年10月から景品表示法違反です。措置命令という行政処分の対象になります。

広告主が取るべき対策:嫌われる前に検知する

配信前・配信中・制作の3段階で嫌われる広告を防ぐ対策図

嫌われる広告への対策は、配信前・配信中・制作体制の3段階で仕込めます。

配信前:表現チェックを獲得KPIの外に置く

配信前に不快リスクを別枠で点検するチェックリスト図

配信前のチェックリストに、成果と独立した「不快リスク」の観点を入れます。

  • 性的・グロテスク・恐怖/コンプレックス訴求に寄っていないか
  • 誰かの外見や症状を嘲る構図になっていないか
  • 閉じるボタンは見つけやすいか、誤タップを誘う配置になっていないか
  • PR表記・広告であることの表示は明確か

JAROは同年度、問題のある広告への「見解」(厳重警告・警告)を20件発信しています。苦情の集中は、行政処分や媒体審査落ちにつながる手前のシグナルとして扱ってください。

配信中:「嫌われシグナル」を定点観測する

配信中に嫌われシグナルを定点観測するダッシュボード図

JAROに届く苦情は、わざわざ申し立てをした人の分だけです。大半のユーザーは黙って広告をブロックするか、ブランドから離れます。CTR・CVRと並べて、次のシグナルを定点観測してください。

  • Meta の「広告を非表示にする」などのネガティブフィードバック率
  • フリークエンシー(同一ユーザーへの表示回数)の過多
  • 広告へのコメント欄の反応

制作:単一クリエイティブに賭けず、パターンを分散する

単一クリエイティブの使い回しとパターン分散を対比した図

「しつこい」という苦情は、同じクリエイティブの使い回しから生まれやすいものです。訴求や表現の異なるパターンを複数用意し、短いサイクルで入れ替えれば、嫌われる前に降ろせます。嫌われる広告を出さない仕組みづくりは、制作体制の問題でもあります。

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よくある質問

Q1. 広告への苦情はどこに寄せられますか?

代表的な受付先がJARO(日本広告審査機構)です。広告・表示への消費者の声を受け付け、広告主への情報提供や「見解」(警告など)の発信を行う公益社団法人です。このほか媒体各社の通報機能や、景品表示法違反については消費者庁の情報提供窓口があります。

Q2. 苦情がもっとも多い広告の業種はどこですか?

2025年度は電子書籍・ビデオ・音楽配信が全媒体合計で最多でした。ただし業種内でも苦情は特定の広告主に集中する傾向があり、業種全体の問題とは限りません。

Q3. ダークパターンとはどのような広告手法ですか?

消費者を意図しない操作に誘導するUI設計の総称です。広告では、偽の閉じるボタン、誤タップを狙った配置、画面を覆って消せない表示などが該当します。JAROへの掲載手法への苦情は前年度から急増しており、監視が強まっている領域です。

Q4. 苦情の多い広告を出し続けるとどうなりますか?

JAROの警告・厳重警告の対象になるほか、優良誤認やステルスマーケティングは景品表示法の措置命令の対象です。媒体の審査落ちや広告アカウントの制限につながる場合もあります。

まとめ

  • 広告への苦情は過去最多を更新し、6割がネット広告に集中している
  • 嫌われる広告は「表現」「手法」「表示」の3つの型に整理できる
  • 業種ランキングは特定広告主への集中で動く。見るべきは自社の広告が3つの型に該当するかどうか
  • 対策は、配信前の不快リスクチェック、配信中の嫌われシグナルの定点観測、パターン分散の3点

嫌われない広告は、守りの話ではなく成果の土台です。まずはいま配信中のクリエイティブを、3つの型に照らして棚卸ししてみてください。